【ネタバレ】『走馬灯株式会社』全10巻の感想。衝撃の最終回は…！

また面白い漫画に出会うことができました。

走馬灯が見えるというは、昔の記憶が脳内を駆け回る様子のことで、走馬灯はたいてい死ぬ前に見るものとされています。

しかし、題名にもなっている「走馬灯株式会社」は、生きている間に本人視点で記憶を振り返ることができるサービスを提供する会社です。

このサービスで面白いのが、自分が関わりを持った人の人生も見れるということ。

それによって、隠れていた事実が明らかになり、自分が騙されていた・勘違いしていたと気づく人が出てくるのです。

事実確認によって明らかになったネタを鍵として展開するヒューマンドラマの短編集。

とても読みやすい作品です。

さて、2巻をポチります。

1巻1巻の充実度が凄い。

それは1冊で4〜5人もの人生を読んでいるからでしょう。

この巻では5人の人生が流れていました。

その中で興味深かったのは、死に際のおじいちゃん・石丸さんの人生。

石丸さんは、村に恋人を残したまま東京に出て成功しますが、恋人に未練が残ったまま年を重ねます。

しかし、走馬灯株式会社をきっかけに彼女と再会し、人生を終えることができたのです。

少し、感動しました。

もう1〜3巻読みましたが、ハッピーエンドとバッドエンドが半分ずつぐらいですね。

バッドエンドの話は最後ゾッとして怖いんですが。

この巻で印象的だったのはデザイナーを目指す妹尾舞さんの話。

偶然出会ったホームレスのおじさんが、実は小さい頃、父の代わりにお世話になった人だったという話なんですが、そのおじさんはお金のない舞さんのために自分の臓器を売るんですね。

そして、おじさんのおかげで舞さんはブランドを立ち上げたというオチ。

こういう愛がある回が、個人的に好きです。

1人1人の人生、映画を見ているような起承転結に毎回、惹きつけられます。

この巻で印象的だったのは、最初に登場した多岐川隼人さん22歳の話。

彼は就職前に、彼女の理央が紹介してくれた温泉村に旅行に行くんですが、実はそれは彼女が仕組んだ殺人の段取りだったというオチ。

村の風習で、隼人は22歳で殺されなくてはならなかったらしいのです。

結局、なんとか隼人は脱出できたんですが、隼人を殺すために彼女になって村まで連れてきた理央のヤバさにゾッとしました。

さて、5巻を読みます。

一作目が怖すぎてゾクゾク。

でも30〜40ページの間に、伏線回収までしっかり描かれているのでスッキリ読めました。

2作目の探偵会社の話は、この漫画で初めての長編でしたが、まさかの理乃が走馬灯株式会社に転職するというオチ。

長編にしては、スッキリとしない感じでしたが、やはりこの作者さんは最後に読者をゾクっとさせるのが好きなようです。

『鉄民』の時もそうでしたからね。

そして、この巻の最後には走馬灯株式会社の株主を匂わせるようなシーンが……

会社の謎が明かされていくのでしょうか。

楽しみです。

この漫画を振り返ると、「悪いやつが実は良いやつ」か「良いやつが実は元凶だった」という話が多いですね。

「悪いやつが実は良いやつ」系の話は、感動するし心温まるので良し。

「良いやつが実は元凶だった」系の話は、最後の１ページで毎回ゾクっとします。

この巻でも、少女の自殺をきっかけにクラスのイジメを無くそうと皆に語りかけていた女の子が、実は少女を自殺に見せかけて殺した犯人だったという話があります。

まさに、The・ホラーという感じ。

どんでん返しが上手いですね。

この漫画は、オムニバス形式の短編集で進んできましたが、どうやらその中にも主人公がいるようです。

探偵の澄川は、助手の理乃が走馬灯株式会社に転職したため、理乃を取り戻そうと走馬灯社を探しますが、なかなか見つかりません。

そして、実際に走馬灯社に行った先輩からイメージ図をもらうんですが、その中に死んだはずの元・恋人の姿が。

この女性は、1巻からずっと走馬灯社の受付を担当している神沼さんです。

どうやら主人公・澄川と神沼の謎が解かれて、この漫画は終わる未来が見えました。

楽しみなったところで、8巻へ手を伸ばします。

短編集が続くなか、走馬灯社の謎も徐々に明かされていきます。

理乃がかつてディスクを壊し、人生を消してしまったタクちゃんが、実は走馬灯社の株主でした。

あと2巻でこの作品も終わりますが、果たしてモヤモヤした部分は晴れるんでしょうか。

あと、相変わらず鬱エンドの短編は胸が苦しくなりますね。

さて、9巻を読みます。

いよいよクライマックス突入か。

走馬灯社で自分のディスクを割ってしまい人生がめちゃくちゃになった喜島と再会した澄川は、ようやく走馬灯社を発見。

澄川は自分の人生を眺めます。

そして理乃も、走馬灯社の社員になるための最終テストに臨みます。

しかし、ここで喜島が神沼さんを銃で撃ってこの巻は終了。

果たしてどうなるんでしょうか。

次巻で全ての謎が明かされます。

なんと、澄川が元・恋人として慕っていた遥は、株主・桂木によって書き換えられた記憶でした。

そして、理乃の記憶まで奪おうとした桂木ですが、澄川が、自分の記憶と引き換えに理乃を助けて終了。

澄川は自分のディスクを壊したのです。

ディスクを壊してそれまでの人生が無くなった澄川は、走馬灯社の株主になりました。

そして澄川は皆から忘れられ、助けた理乃も澄川と走馬灯社の記憶がシャットアウト。

理乃だけはハッピーに暮らせているようです。

見方によってはハッピーエンドですが、皆が幸せのハッピーエンドにはなりませんでしたね。

謎は解けたのでミステリー的にはスッキリしましたが、ラブコメ的にはバッドエンド。

でもこれが人生。

さすが菅原先生(作者)。